数ある医療マンガの中でも、医師から絶対的な支持を集める『ブラック・ジャック』（手塚治虫）。改めて読むと、その中には現代医学でもなお解決策が出ていないような数々の「普遍的な問い」が発せられています。『ブラック・ジャック』のストーリーと、現代の医療現場を照らし合わせながら、さまざまな角度で考察する本企画。今回は、エピソード「白い正義」より、医師の自信について考えます。
ブラック・ジャックの患者と聞いて…
海外から日本へ向かう飛行機のシーンから、今回のストーリーは始まります。日本の大学病院の脳外科医である白拍子医師は、たまたま乗り合わせた男性が脳腫瘍を患っていると気付きます。患者の妻から「ブラック・ジャックの手術を受ける」と聞き、黙っていられなくなる白拍子医師。「あの男は正規の医者じゃない」「理不尽な高い手術料を取るので悪評プンプン」などと声を荒げます。彼なりの“正義感”に燃えて、患者を説得し、自分が手術を引き受けることにしました。
後に、ブラック・ジャックは、白拍子医師に患者を返すように要求します。それは、「儲け」のためだけではありませんでした。その患者は“ある事情”を隠し持っていたのです――。
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エリート医師を襲う思わぬ事態
ストーリーの終盤、患者の“ある事情”によって、白拍子医師の病院に暴力団が乗り込み、警察が出動する大騒動になります。しかも、患者の妻も麻薬を密輸していたことが判明。「そういう連中のために 私のような立場の医者も必要なんだ」とブラック・ジャックは言います。
白拍子医師は大学病院で外科医長を務めながら、将来は発展途上国の医療に一生を捧げたいと理想に燃える医師です。実家は大豪邸で「若さま」と呼ばれる、今でいう”勝ち組”。そして医師としての実績もあるのでしょう。周りの医師が「オペはとても無理」と言う中でも「私ならできる！」と豪語するほど自信に満ちあふれています。
ただ今回、自信のあまりそのまま一人で突っ走り、思わぬ事態を引き起こしました。おそらく人生初と思われる大失敗を経てもなお、変わらず理想を追い続けるのか、それともある程度現実との折り合いをつけて方向転換するのかは読者の想像力に委ねられています。
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