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保有資産を上手に活用するための「財務諸表の読み方」BS編

2020年12月17日

大きな資本を必要とする病院にとって、負債の返済は頭を悩ませる問題の一つではないでしょうか。この問題を解消する一つの手が、保有資産を上手に活用することです。自院の活用具合を把握する方法について、医療機関に対し財務諸表に基づいた経営改善を提案している濱岡勇介氏(エムスリーキャリア 経営支援事業部)が解説します。本記事は、濱岡氏が講師を務めたセミナー「今さら聞けない財務諸表の読み方BS編」を編集したものです。
※2015年に掲載後、2019年6月26日に更新
【提供:病院経営事例集

効率性分析の主な指標

保有資産を上手に活用するために財務分析することを、「効率性分析」と呼びます。たとえば医療機器を購入したのにほとんど使っていなければ、設備投資に対する効果が薄く、「効率性が低い」状態です。同じ資産を持っていても、効率性が高い病院ほど医業収益が増えるのですから、注視する必要があるでしょう。

それでは、効率性分析に使用する主な指標をチェックしていきましょう。

(1)総資本回転率

資産全体の活用度を示す指標です。分母の総資本(負債+純資産)は通常、期中の平均値を用います。総資本回転率が高いほど、活発な診療活動が行われていることになります。

総資本回転率は高いほど良く、100%が目標の目安といわれます。一般病院(医療法人、黒字、150床)であれば、まずは平均の90.0%を目指したいところです=図1=。100%よりも低いようなら、医業収益が少な過ぎるか、または、総資産が多過ぎる可能性があります。診療報酬の請求漏れがないか確認したり、空き地などの不良資産を処分したりといった対応が必要かもしれません。

図1 総資本回転率

(2)固定資産回転率

不動産や医療機器などの固定資産をどれほど有効活用したか把握する指標です。分母の固定資産費は通常、期中の平均値を用います。

固定資産は、投資回収が長引くため、投資の良し悪しがチェックされにくく、不良資産になりやすい面があります。しっかりとチェックしたいところです。一般病院(医療法人、黒字、150床)であれば、平均148.4%のため、同水準かそれ以上を保ちたいところです=図2=。

さらに、病院全体だけでなく、部門別に固定資産回転率を見れば、それぞれの設備投資案件の妥当性を判断するのにも役立ちます。そして、医療機器メーカーに対しては、「MRIはこれだけの回転率で稼働しているから、これだけの価格じゃないと購入できない」と力強く価格交渉を行えるようになります。

図2 固定資産回転率

(3)在庫回転率

医薬品や医療材料などの在庫が使われているかを見る指標です。分母の在庫金額は通常、期中の平均値を用います。

在庫回転率は、月次や四半期ごとに確認し、回転率が下がっていないかを確認しましょう。在庫が多くなることで、スペースを取ったり在庫管理の手間が掛かったりとコスト増につながります。季節変動などはあるでしょうが、回転率が毎年同じような動きを取るようにコントロールできるといいのではないでしょうか。

継続的な医療提供に求められる“筋肉質な財務体質”

“左上大、右下大”のBSは、筋肉質な財務体質の証

日々進歩する医療にキャッチアップするためには、巨額の設備投資が不可欠です。だからこそ医療機関は、負債と資産が膨らんだ“肥満体質なBS”にならないようにコントロールしなくてはなりません。負債と資産のバランスを保つことで初めて、継続的な医療提供ができます。

ぜひ、安全性指標や効率性指標を利用しながら、“筋肉質な財務体質”をつくり上げてください。

濱岡勇介
はまおか・ゆうすけ

慶應義塾大学経済学部卒業後、都市銀行にて法人取引、与信管理に従事。300床規模の医療機関などに対して、経営改善の提案、中長期計画の立案、融資を実行。その後、製造業の事業再生プロジェクトに参画、2012年にエムスリーキャリア株式会社入社。現在は、経営支援部門にて、医療機関の戦略立案とその実行を支援。

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