
ワンマン経営に我慢の限界を感じて転職活動に踏み切ったT先生。年収を重視していたT先生が3つの転職先候補から選んだのは、県外の公的病院でした。後編では新しい職場を中心にお話を伺いました。(取材日:2021年1月15日)
面接先の熱意に心動き、入職を決意
——前職では親族経営への不信感などを数年にわたり抱えた末に、経営陣と大喧嘩をしたというお話でした(前編参照)。退職はスムーズにできたのでしょうか。
想定の範囲内でしたが、かなり揉めましたね(笑)。経営陣に退職の情報が洩れることを回避するために、転職の件は誰にも言わずに過ごしていました。また、退職を申し出た途端に解雇されることもシミュレーションした上で、就業規則に基づいて退職1-2ヶ月前に退職の意向を上司に伝えました。予想通り経営陣からは人格を猛烈に批判され、さらに「君が辞めて病院が被る損害額を請求する」など無茶苦茶なことを言われました。私は法的に問題ないように行動していたのでそれらの話に耳を傾けることはせず、「退職するまでの我慢」と思い、割り切って対応しました。

——そして転職先として選んだのが、医療過疎地の公的病院でした。入職理由を教えていただけますか。
「常勤の麻酔科医に来てほしい」という熱意を感じたこと、私の希望を叶えるために給与面で柔軟な対応をしてくださったことに心を動かされました。
病院の給与規定では、50代の私の場合、月40時間の見込み残業代を含めた年収提示額が2,000万円でした。住宅ローンがもう少し残っており、子どもの教育費がまだまだ掛かるので、最低でも年収2,100万円は欲しいと考えていたのは前編でお話しした通りです。この希望額をクリアするために新たな当直待機制度を作ってくださり、年収が2,200万円になるよう調整してくださったんです。私のためにここまでしてくださるのだから、その期待に応えたいと強く思いましたね。
また、常勤中堅医師のマンパワーが充実していることも安心材料になりました。常勤医が約40人おり、しかも働き盛りの中堅医師が多く、助け合って働けそうだと感じたことも大きな決め手になりました。
自宅から車で1時間半かかるので、平日は病院から歩いてすぐの社宅に暮らし、週末は自宅に戻るライフスタイルにはなります。車で1時間半なら家族に何かあったときにすぐ自宅に戻れますし、過去に単身赴任の経験もあったので、そこは許容範囲でした。
必要に応じて環境を変えることも必要

——入職して約4カ月経ちますが、いかがですか。
忙しくも充実した日々を送っています。地域の基幹総合病院なので、外科や整形外科、泌尿器科、産婦人科など診療科が多彩で、緊急手術も頻繁に行っています。長らく単科の麻酔ばかりやってきたので、新しく覚えたり学び直したりすることが多く、初心に戻って楽しく仕事ができています。臨床研修指定病院でもあるため若手医師に指導する機会も多くあります。私自身、彼らと接することで勉強になっていますね。
また、大学の関連病院にもなっているので、医局員とうまくやっていくのも私の大事な職務の1つです。仕事で関わるスタッフの幅が以前よりグッと増え、とてもいい刺激をもらっています。学会活動も学会出張規定の範囲内で思う存分やらせてもらえるのでありがたいですね。
——これまで勤務してきた職場との違いは感じますか。
麻酔の業務に専念しやすくなりました。これまでは外科系の個人病院に勤務することが多かったので、術前から術後の管理まで麻酔科が本来担わないようなことにまで対応することがものすごく多かったんです。今回入職した公的病院ではそこを内科医や担当科の医師が担ってくれるので、自分の責任分担の範囲がかなり減りました。
私の経験に限った話かもしれませんが、個人病院に比べて、公的病院は内科系のマンパワーがとても充実していると感じています。私は長らく1人麻酔科医をしてきましたので、自分の裁量ですべての仕事のやり方を決める働き方をしてきました。ですので、周囲のスタッフのやり方に合わせることが増えたのも転職後の変化の1つでしょうか。今まで行ってきた麻酔法や使用機材と相違があることが多々あり、いろんな発見があって学びも多いです。
——最後に、転職を考えている医師にメッセージをいただけますか。
若い頃と齢を重ねてからとでは、やりたいことがずいぶん変わってきます。人生は1度しかないので、その時々で、やりたいことができる環境に身を置くことが大切だと思います。自分のためになるのなら、転職をしてでも環境を整えるのは良いことだと思います。
私は長らく学術活動から離れていましたが、臨床経験を重ね、50代になってようやく見えるようになったことがいくつかあります。それを今、論文を書いて後世に残せたらと思うようになりました。その思いを実現できる環境を手に入れることができ、今回は良い転職ができたと改めて思っていますね。
- ワンマン経営に「我慢の限界」50代部長の決断―転職ドクターの本音vol.2(前編)
- 「辞めたら損害賠償」雌伏の末に得た職場は―転職ドクターの本音vol.2(後編)【本記事】
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